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更新日 2025/07/02

【とこぽへんしゅう部がおとどけする「とこポスト」 キッズばん】ぐんま県生まれ、とちぎ県育ち。こんにちは、ボクはかぬま土!


小学校の昼休み。ひとりで花だんの近くを歩いていたら、「やあ、こんにちは!」と声がした。


目の前にあるのは、黄色っぽいツブツブが入ったふくろ。ふくろには、「かぬま土」って書いてある。かぬま土?「かぬま」って、たしかとちぎ県にある地名だよね。ひょっとして、この「かぬま土」が話しかけてきたのかな?


キョロキョロしていると、「そうだよ、ボクはかぬま土。よろしくね」と、また声がした。かぬま土って何だろう?「かぬま土」っていうくらいだから土だよね、見た目は黄色っぽいツブツブだけど。


「知らないの?じゃあ今からじこしょうかいをするよ。ぜひボクのことを知ってね!」


そこから、かぬま土の話が始まったんだ。




ボクは、日本中に広まった、とちぎ県で取れるかぬま土。


ボクは、かぬま土。


かぬま市って知ってる?そうそう、とちぎ県の西の方にある市だね。名前の通り、ボクたちはかぬま市のあたりで取れた土だよ。


ふくろに入って、ホームセンターなどで売られているよ。ひょっとしたら、花ややさいのタネやなえが売られているような、ホームセンターの園げいコーナーで見たことがあるかもしれないね。


というのも、ボクは植物を育てるのに役立つ土だからなんだ。ボクは、水をたくさんたもつことができて、空気をよく通すから、とくにサツキを育てるのに向いているんだよ。


60年くらい前の昭和40年代に、えーと、キミたちにとっては、おじいちゃんやおばあちゃんが子どもだったころかな?そのころ、全国てきにサツキを育てるのが大人気になったんだ。今でも、何かがブームになって、はやったりすることがあるでしょう?それと同じだね。サツキブームのとき、サツキを育てるのにぴったりなボクも有名になって、日本中に広まったんだよ。




ボクが生まれたのは、ぐんま県のあかぎ山。


実は、さっきボクは「土」だって言ったけど、正かくにいえば「軽石」なんだよ。軽石は、火山からふき出した、小さなあながいっぱい開いている石のこと。そう、ボクは火山のふん火で生まれたんだ。すごいでしょう?



どこの火山か、だって?ぐんま県にあるあかぎ山だよ。とちぎ県のおとなりの、ぐんま県でボクは生まれたんだ。


そうだよね、ぐんま県の山で生まれたのに、どうしてかぬま市でかぬま土が取れるのか、ふしぎに思うよね。


それはね……




ボクは、風に乗って空をとんでやってきた!


ボクは、空をとんでやってきたんだよ。


今から4万5千年前の大昔、あかぎ山が大ふん火したんだ。そのときのふん火は本当に大きなもので、ボクはそのふん火で生まれ、1万メートルい上もの高さにふき上げられたんだよ。


その高さには、「へん西風」という西から東へふく強い風が一年中ふいていて、ボクは風に乗って東へ運ばれた。そして、あかぎ山から50キロメートルもはなれた、とちぎ県のかぬま市のあたりに降り積もったんだ。


「ふりつもった」といっても、「パラパラとふってきた」なんてものじゃなくて、なんとかぬま市ふ近では、150cmくらいのあつさにつもっているよ。すごいあつさでしょ、キミの身長より上じゃないかな?どれだけたくさんの軽石がとんできたかわかるよね。だからこそ、今のかぬま市あたりでは、かぬま土がいっぱい取れるんだ。




ボクのこと、わすれないでいてくれるとうれしいな。


わかってくれたかな?


ボクは、ぐんま県の火山のふん火で生まれて、風に乗って空をとび、とちぎ県にやってきてふりつもり、4万5千年たってからほり出されて、サツキを育てるために人気者になったんだよ。ふしぎな運命だよね。


じゃあ、そろそろ昼休みも終わりだね。


もしこれからも、花だんの近くやホームセンターでボクを見かけたら、ボクの話を思い出してくれるとうれしいな。




主な参考文献


栃木県立博物館 テーマ展「地層の剥ぎ取り標本って、おもしろい!」

(2025年3月15日~6月15日)

とちぎテレビ 『U字工事の旅!発見』 #158 かぬま土 ~栃木県・鹿沼市~

日本火山学会ウェブサイト「火山学者に聞いてみよう -トピック編」

http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic166.html


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