【とこぽへんしゅう部がおとどけする「とこポスト」 キッズばん】ぐんま県生まれ、とちぎ県育ち。こんにちは、ボクはかぬま土!

小学校の昼休み。ひとりで花だんの近くを歩いていたら、「やあ、こんにちは!」と声がした。
目の前にあるのは、黄色っぽいツブツブが入ったふくろ。ふくろには、「かぬま土」って書いてある。かぬま土?「かぬま」って、たしかとちぎ県にある地名だよね。ひょっとして、この「かぬま土」が話しかけてきたのかな?
キョロキョロしていると、「そうだよ、ボクはかぬま土。よろしくね」と、また声がした。かぬま土って何だろう?「かぬま土」っていうくらいだから土だよね、見た目は黄色っぽいツブツブだけど。
「知らないの?じゃあ今からじこしょうかいをするよ。ぜひボクのことを知ってね!」
そこから、かぬま土の話が始まったんだ。
ボクは、日本中に広まった、とちぎ県で取れるかぬま土。
ボクは、かぬま土。
かぬま市って知ってる?そうそう、とちぎ県の西の方にある市だね。名前の通り、ボクたちはかぬま市のあたりで取れた土だよ。
ふくろに入って、ホームセンターなどで売られているよ。ひょっとしたら、花ややさいのタネやなえが売られているような、ホームセンターの園げいコーナーで見たことがあるかもしれないね。
というのも、ボクは植物を育てるのに役立つ土だからなんだ。ボクは、水をたくさんたもつことができて、空気をよく通すから、とくにサツキを育てるのに向いているんだよ。
60年くらい前の昭和40年代に、えーと、キミたちにとっては、おじいちゃんやおばあちゃんが子どもだったころかな?そのころ、全国てきにサツキを育てるのが大人気になったんだ。今でも、何かがブームになって、はやったりすることがあるでしょう?それと同じだね。サツキブームのとき、サツキを育てるのにぴったりなボクも有名になって、日本中に広まったんだよ。
ボクが生まれたのは、ぐんま県のあかぎ山。

実は、さっきボクは「土」だって言ったけど、正かくにいえば「軽石」なんだよ。軽石は、火山からふき出した、小さなあながいっぱい開いている石のこと。そう、ボクは火山のふん火で生まれたんだ。すごいでしょう?

どこの火山か、だって?ぐんま県にあるあかぎ山だよ。とちぎ県のおとなりの、ぐんま県でボクは生まれたんだ。
そうだよね、ぐんま県の山で生まれたのに、どうしてかぬま市でかぬま土が取れるのか、ふしぎに思うよね。
それはね……
ボクは、風に乗って空をとんでやってきた!

ボクは、空をとんでやってきたんだよ。
今から4万5千年前の大昔、あかぎ山が大ふん火したんだ。そのときのふん火は本当に大きなもので、ボクはそのふん火で生まれ、1万メートルい上もの高さにふき上げられたんだよ。
その高さには、「へん西風」という西から東へふく強い風が一年中ふいていて、ボクは風に乗って東へ運ばれた。そして、あかぎ山から50キロメートルもはなれた、とちぎ県のかぬま市のあたりに降り積もったんだ。
「ふりつもった」といっても、「パラパラとふってきた」なんてものじゃなくて、なんとかぬま市ふ近では、150cmくらいのあつさにつもっているよ。すごいあつさでしょ、キミの身長より上じゃないかな?どれだけたくさんの軽石がとんできたかわかるよね。だからこそ、今のかぬま市あたりでは、かぬま土がいっぱい取れるんだ。
ボクのこと、わすれないでいてくれるとうれしいな。

わかってくれたかな?
ボクは、ぐんま県の火山のふん火で生まれて、風に乗って空をとび、とちぎ県にやってきてふりつもり、4万5千年たってからほり出されて、サツキを育てるために人気者になったんだよ。ふしぎな運命だよね。
じゃあ、そろそろ昼休みも終わりだね。
もしこれからも、花だんの近くやホームセンターでボクを見かけたら、ボクの話を思い出してくれるとうれしいな。
主な参考文献
栃木県立博物館 テーマ展「地層の剥ぎ取り標本って、おもしろい!」
(2025年3月15日~6月15日)
とちぎテレビ 『U字工事の旅!発見』 #158 かぬま土 ~栃木県・鹿沼市~
日本火山学会ウェブサイト「火山学者に聞いてみよう -トピック編」
http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic166.html